多職種医療チーム
当院では精神科主治医・精神保健福祉⼠・看護師・公認⼼理⼠などからなるチームを形成しています。
そのため、医師による専⾨外来診察のほか、個別相談、各種⼼理テストなどを実施しております。また、内科医も常勤しております。
ご⾃⾝では⾃分の病気を認めることが怖い、と感じる⽅も多いものです。
ご家族はもちろん、会社の⼈事担当者、スクールカウンセラー、⾏政機関などの⽅々からのご相談もお受けしています。
家族会の実施
当院では下記の家族会と家族教室を開催しています。
- 家族会(アルコール、ギャンブル、薬物など)
- ネットゲーム依存家族教室
周愛利⽥クリニックの家族会、家族相談は専⾨スタッフの司会進⾏により、同じ悩みを持つご家族同⼠で気持を分かち合いながら依存症の背景を理解し、望ましい対処⽅法などが学べる場、そして苦労してきたご家族の気持ちを楽にできる場です。
減酒療法の取り組み
地区担当保健師も交えた多職種連携でアルコール関連問題に多面的にアプローチ
東京都北区にある周愛利田クリニックは1984年11月開業の精神科クリニック。現在は、豊島区巣鴨にも分院の周愛巣鴨クリニックを開業。精神科疾患全般を診療し、特にアルコールを中心としたさまざまな依存症治療に力を入れている。
同院のアルコール使用障害患者は月数百名で、そのうち約2割が女性。男性患者の背景はさまざまだが、女性患者は重症の人が多く、かつ専業主婦や生活保護受給者など無職の人が多い。開院以来数万人の方の回復にかかわってきました。
初診時には、まず過剰飲酒による健康障害について患者に説明。アルコール使用障害が家庭的な障害や社会的な障害のみならず、死に直結する身体的障害をも引き起こす可能性のある病気だと理解してもらい、治療の意思を確認。断酒か減酒か、治療目標は患者自身に選択してもらう。
薬物療法では、依存症の中核症状である飲酒欲求を抑えることを目的に飲酒量低減薬を処方。デイナイトケアではミーティングなどの治療プログラムを実施。同じ問題を抱える仲間との交流が治療脱落防止につながっている。
多職種でのケースカンファレンスを毎日実施。必要に応じて家族や地区担当保健師をはじめ、地域で関係している人もカンファレンスに参加するなど、医療機関以外の関係機関とも密に連携している。
1. アルコール使用障害の診療方針
アルコール使用障害にはさまざまな病相がありますが、当院ではどのような状態の患者さんであってもできるだけ受け入れることを基本方針としています。
例えば、飲酒による酩酊状態や意識障害なども含めて、当院で扱えるものはできるだけ受け入れて、対応が難しい場合のみ他院にお願いする、その見極めを大切にしています。
受け入れ可能と判断した患者さんには、まずはアルコール使用障害によるさまざまな臓器障害の発症や増悪、足元のふらつきなどによる転倒など、この病気が死に直結する、あるいは重篤な状態に陥るリスクのある病気だと説明します。
そして治療の意思を確認し、断酒あるいは減酒のどちらを治療目標とするかをご本人に選択してもらいます。
一昔前であれば、断酒を受け入れない患者さんは治療の場から排除されてしまうこともありました。
しかし、現在は飲酒量低減という新しい武器があります。
身体的な障害はもちろん、仕事ができなくなるなど社会的な問題を軽減するために、断酒だけにこだわらず減酒から行ってみる価値はあると考えています。
2. アルコール使用障害治療の実際
治療にあたっては、初診時に飲酒量低減薬による薬物療法を提案します。
アルコール使用障害の治療では、飲酒欲求を抑えることが重要です。
飲酒欲求の強い人、強い時期があり、断酒治療中の方であっても飲酒欲求を抑えきれず、薬の服用をやめてしまい通院が途絶えたケースも経験しました。
また、飲酒欲求が抑えられないことでイライラ、不安、落ち着きのなさといった症状として現れることもあります。
そのため飲酒欲求を抑える作用を期待して飲酒量低減薬を処方します。
さらに、デイナイトケアへの参加を提案します。
デイナイトケアではミーティングを主体に体操やビデオ鑑賞、作業療法などさまざまなプログラムを用意しています。
特にミーティングは重要で、参加者が自分の体験を語り、他の人の体験談を聞くことで自分を見つめ直し、病気への認識を深めてもらいます。
また、同じ問題を抱える仲間との交流が治療からの脱落を防ぎ、回復への大きな力になっていると感じます。
実際に、仲間に会うために通院を続けていると話す患者さんも多く、気軽に人とつながれるアットホームな雰囲気づくりを心がけています。
3. 院内での多職種連携と地域連携
当院では医師や看護師、精神保健福祉士(PSW)作業療法士など多職種によるケースカンファレンスを毎日実施しています。
診察では「飲んでいません」と言っていた患者さんが、デイナイトケアのミーティングでは「実は昨日飲んでしまった」と告白しているなど、患者さんの状況を正確に把握するために多職種での情報共有は欠かせません。
患者さんを取り巻く全ての人が情報共有により目線を合わせ、患者さんに対して同じ治療方針で向き合うことが重要です。
また、治療が順調に進んでいても、急性アルコール中毒の発症や肝障害・糖尿病などの悪化、あるいは事故や犯罪につながる危険もあります。
昨日まで元気に通院していた若い患者さんが今日亡くなってしまうことも起こり得るのです。
「今日ミーティングに来なかった」、「最近飲んでいる気配がある」といった情報を日々共有できれば、自宅を訪問する、入院してもらうなど素早い対処も可能であり、毎日のケースカンファレンスは必要不可欠であると考えています。
さらに、アルコール使用障害に関連する問題は身体面だけでなく、家族関係や経済面・心理面、仕事などの社会面と多岐にわたります。
そのため、当院では院内のケースカンファレンスとは別に、家族や地域の保健所の保健師をはじめ、できるだけ多くの地域で関係している人を招いたケースカンファレンスを実施しており、連携しながら治療への早期介入、家族支援や社会復帰支援などにあたっています。
実際に、ご家族からの相談を受けた保健師が数年がかりで関わりを続け、ようやく受診につながった患者さんもおられます。
もちろん、専門治療に早期につなぐことも大切ですが、アルコールの問題を直視できないご本人に周囲の人が愛情を持って働きかけ、治療の動機を形成していく作業も重要だと思います。
その上で、地域の保健師の果たす役割は大きいため、今後さらに保健師と密な連携をしていきたいと考えています。
ご本人の問題だけでなくその方を取り巻く人間関係にも目を向けて、過剰飲酒の原因にアプローチしていくために、院内・院外を問わず多職種で患者さんに関わっていくことが求められているのではないでしょうか。
デイナイトケア・デイケア・ショートケア
⽉曜⽇から⾦曜⽇までの5⽇間、午前8:30から午後6:30まで1⽇10時間のデイ・ナイト・ケアを実施しています。
安⼼して⽣活できる環境のため、⽣活習慣を整え、社会復帰をしていくための治療プログラムを実施しています。
また、1⽇6時間のデイケア、3時間のショートケアと、患者様の⽬標やライフスタイルに合わせて治療を⾏うことができるプログラムもございます。
利⽤者同⼠の交流やミーティング・リクリエーションなどを通じて、⽇常⽣活の中で回復のステップを⾒つけることが出来たり、精神科主治医や看護師、様々な専⾨家が在籍しているので、いつでも相談・問題があったときにはすぐに発⾒してもらうことが出来ます。
そして周愛利⽥クリニックでは、都内で唯⼀の⾃前厨房を設置し、管理栄養⼠の指導の下、デイナイトケアプログラムの⼀環として1⽇3⾷の温かいお⾷事を提供しております。